月海夜 2

 ディオの尻の間に添えたジョナサンの手指には、粘り気のある白濁液がついていた。
 指を閉じたり開いたりすると、それはにちゃりと水音をたててジョナサンの指間に薄膜を張る。重力に逆らっていた液体もやがてゆっくりとジョナサンの手首に流れていった。
「ウ……ッ、うぐ、ンン……ッ!」
 胸にしがみつくディオは高く上げた腰を、時たま大きく揺さぶった。その度にディオの秘穴からは多量の白濁がごぽごぽと溢れ、会陰を濡らしつつ足へと伝っていく。
 ここに来るまでの間、ディオは一体何をしていたのか……。吸血鬼という魔物は何を糧としているか、よくある伝記やおとぎ話に書かれているように、人間の生き血をすするのだろう。そして、人の精気を好物とするのだ。
 ディオはこの体で、ここの穴を使って何人もの男の精気を吸ったのか、そして腹に精を蓄えたのか。ジョナサンが腹奥まで突き刺したせいで、中に詰まっていた男たちの残滓がこぼれてきたというわけなのか。ジョナサンは下卑た想像に嫌気がさした。
「ディオ、これまでに一体何人をココでくわえ込んだんだ!?」
 ジョナサンは尻たぶを平手で打ちながら、中指をディオの緩む秘穴に突き入れた。バチン、と肉同士がぶつかる音を立てた。
「はう! ……クっ、……!」
 ディオの冷めた表面の肌とは裏腹に、体内はジョナサンの指よりも熱くなり、窄み口はもごもごと蠢き指の侵入を阻んだ。
「こんな、尋常じゃあない……」
 指でかき回すと、粘液は奥から更に流れ出し、ジョナサンの手もディオの尻周りもすっかり洩らした粘液でびしょ濡れになってしまった。
「あッ、あ……くう、知る、かッ、……この、ディオが……そんなこと……する……わけ、な……ッ」
「だったら、これは何だって言うんだ!」
 潤滑油代わりとなった白濁液は難なくジョナサンの指を、一本、そしてもう一本と飲み込む、人差し指から小指までが入り込むと流石に穴はきゅうきゅうと苦しげに締め付ける。
「あふ……ッ、ううう、く、また……ッくる……!」
 ディオはジョナサンの首に手を回して抱きつく。押さえ込まれたジョナサンは、顔を背けるが、あまりにも必死なディオを突き放す勇気は出なかった。
 くる、と告げたディオは太腿を震わせて腰を何度も細かく跳ねさせた。入ったままの指は動きに合わせて、ぎゅっ、ぎゅっと秘口を開け閉めする。
 すると、ジョナサンは指先に何かを感じた。ぷちゅ、と指の間を縫って、粘液は泡立ちながら排出されていく。ジョナサンは恐ろしくなって、指を抜いてしまった。
 いくらなんでも、おかしい。これは本当に精液なのか、だとしても量が多すぎる。何人、いや、何十人もの男に抱かれたのだろうか……?
 ジョナサンは、抜いた指を鼻に近づけ匂ってみた。あの独特の臭さが感じられない。時間が過ぎたせいだとジョナサンは言い聞かせ、恐る恐る舌を出し、指に絡んだ液を舌先につける。苦味や青臭さはなく、ほんのりと薄い塩味が口の中に広がった。
「ディオ、……君は、君の体は……」
「あ、アッう、奥が……う、うううッ」
 滴る粘液はディオの太腿も濡らし、腰の下にあるジョナサンの股に垂れた。ディオの秘部は泉のように、液体を溢れさせていく。栓でもしてしまわない限り留まりはしないのだろう。
「これは君が、出しているのか……ッ?!」
 ジョナサンは濡れた手をディオの前に差し出し、粘液に塗れた手の甲で頬を二、三度打った。ディオは目玉だけを動かし、半分程だけ開いた瞳の中にジョナサンの手を映した。
「さあ、な。……だが、……ン、この体ならば……っ、そんなことも……アッ、出来るの、だろうな……」
 紅をさしたように赤いくちびるから、絶え絶えの息と甘い声がはかれ、口が動かされると見慣れぬ白く鋭い牙がちらちらと覗く。爪もまた同じく鋭く伸び、その身の特徴は獣の血が混じっているかのようだ。だが、これは人でも動物でもない。この世に存在してはならない、魔の生き物なのだ。
 人ではない、これは人の形をした穢だ。ジョナサンは、頭の中が薄暗くなっていくのを感じる。細めた目には影の色が濃くなった。
「女と同じなら……、これは、悦んでいるということになる」
「う、う……あっ、ぐっ」
 ディオの口の中に指を突っ込み、ジョナサンは指先で舌を挟んでやった。牙はジョナサンの肌を傷つけたが、そんな痛みは最早どうでもよかった。
「ぼくの腕にまで君のが垂れてる」
 捲った袖口に愛液が染みているのを、ディオに見せつけてジョナサンは腕を上げた。口から指を抜き取ると、ジョナサンの手に滲んだ血を求めて無意識にディオは舌を伸ばしていた。
「全く……仕様がないな。君、女の子以上に濡らしているじゃあないか」
 腕に流れた一筋を舌で掬い取り、ジョナサンはディオの洩らした粘液を啜った。
「びしょびしょだよ、ディオ」
「……ぐ、……ッ、もう、そんな、こと……は、いいからッ、……はやく、……これッ」
 辛うじて腰を上げ、ディオは勃ち上がったままであったジョナサンの肉棒を片手に取り、秘穴に擦りつける。蕾は、先端に口をすぼめて欲しがり、音を立てて口付けている。
「君は……、君はぼくの嫌がる顔を見たいと言ったね。」
 ディオの腰を両手で掴むと、力の入らない体はジョナサンの股の部分からずり上げられ、腹へ下ろされた。
「ぼくも、同じ気持ちなんだ。」
「ン、ンン! いいからぁ、離せ、さっさと入れろぉっ!」
「ココに、欲しくて欲しくて仕方ないんだろう?」
 腰を持つ両手は、尻たぶを左右に割り、その秘穴を空気に晒した。みち、と穴は広げられた。
「ひあ、くぅ……ッ!」
「だから、こんなに濡らしてるんだ。」
 直接秘所には触れずに、ジョナサンは指を尻の膨らみにそって動かしていく。焦れったい愛撫は今のディオにとってはただの拷問だった。
「君を悦ばせたって、ぼくには意味がないんだ」
 手に余る肉を握ると、指の間から尻肉ははみ出てしまう。その刺激でディオの秘所から、とぷりと愛液が溢れ、それがジョナサンの割れた腹筋の溝に流れ落ちた。
「ぼくは君の泣き叫ぶ顔が見たい。」   
「アッ、……なん、で、……ッ!」
 破れた服を整え、ジョナサンは自分の張った性器を仕舞う。ディオが欲しているのならば、与えなければいいとジョナサンは思った。
「あの日のように、泣きじゃくった目でぼくを見てくれ……ディオ」 
 ――あの日、全身全霊で向かってきた君に対して、ぼくが抱いた気持ちは。
「その君が欲しいんだ。」
 ジョナサンは背に手を回して、ディオを抱きしめた。鼻先にあたるディオの首と胸の繋ぎ目の匂いをかぎ、ジョナサンは目を閉じた。
 抱き返しもせずに、ディオはジョナサンの髪を掴んでいる。お互いの顔は見えないが、ジョナサンは胸に耳をあてれば、ディオの動揺が伝わってくるので、惑う様子を想像出来ていた。



「アッ」
 ディオの腕をひとまとめにし、手首に銀で出来た鎖を巻く。銀は昔話に出てくる吸血鬼が苦手とするものではあるが、ディオに効くとはジョナサンは端から信じてはいない。念のため用意していただけの、気休めでしかない。
「こんなもの、君なら簡単に引き千切れるんだろうけど」
 ディオが抵抗すると、鎖は冷たい音を立てる。その腕を頭の上に上げさせて、ジョナサンはディオを床に仰向けに押し付けた。
「今はそんな力も出せないようだね。」
 ディオの下半身はジョナサンの体で押さえつけて跨られ、片手で拘束された手首を持たれている。
「フン、……することは同じだろ、だったら早くしろ」
 頬は紅潮していたが、ディオの目は冷めていた。眉根に寄った皺は深まる。
「……まだそんな口をきけるんだね。どうせ……君はぼくにお願いするようになるんだ。」
「もういい、さっさとしろ……ッ!」
 息が上がると、ディオは掴まれた腕や伸し掛られた足をじたばたと動かした。命令口調は変わらない。
「我慢出来ないくせに、床をこんなに濡らして」
 灰色をした石床は、ディオの尻が置かれた所からじわりと染みを広がらせていた。洩れる愛液の勢いは止まらずに、ディオの興奮を教える。
「おまえだっていつまで持つものかッ」
 いびつな唇で不敵な笑みを浮かべて、ディオはジョナサンの隠しきれない下腹部を嘲笑った。
 だが、その笑う対象をディオもまた欲している。腰は疼き、早く、早くとジョナサンに訴えかけてくる。
 膨れ上がった自身に耐えてでも、ジョナサンはディオを跪かせたい。
 哀願させ、謝らせたい。そして、自分を欲せばいい。おかしくなる程に。
 どうしようもないほどに傷つけたいと思った。
 自分を裏切った相手に対して、罪の償いをさせたい。
 ――ディオを罰するのは、ぼくだ。
 そして、ディオを許すのも、ジョナサンである。

top text off-line blog playroom