月海夜 28

 汗にしては不自然な箇所にかいている。ジョナサンの頭の中には、ひとつの可能性がよぎる。
 吸血鬼に不可能は無いのだと言い切ったディオの台詞を、ジョナサンは思い出していた。有り得ない現実がここに存在しているのだから、その「まさか」は否定し難かった。肉体を自在に操れると自負している吸血鬼になら、ジョナサンが想像する答えは在るのかもしれない。
 からかうつもりで、ジョナサンは目前の胸を揉みしだいた。
「こうして、」
「ふっ……、んぅ!」
「押してみると」
「ンウ、く……ッ」
「ほら、どんどん出てくるよ」
 弾力のある肌に圧を加えると、染みはじわじわと範囲を広げ布地の色を変えていく。思った通り、乳首の先端部分から分泌されている「液」が元だ。
「これ、一体なんだろうね?」
 薄布を指先で摘んで引っ張ってやれば、もどかしそうにディオは尻を持ち上げた。腰が勝手に動いて、ディオは熱く吐息をついた。
「汗、だ……ッ」
「ここだけこんなに濡らして、胸がこんな風に汗をかくのかい?」
 人差し指でジョナサンは染みを縁取るように円を描いた。硬くなった乳首は未だに直接触れて貰えない。ディオは歯を食いしばりながらいやらしい顔をして、快楽を待ち望んでいる。指を噛む唇の間から、奥に隠れた赤い舌がちらりと覗く。
「ンっ……汗だ、と言って……!」
「汗なら、きっと塩辛いはずだね」
 言い終わるとジョナサンは、ディオの右胸にかぶりついた。突然の強烈な刺激に、ディオは腕を曲げて身を崩してしまった。
「ひっぃ、ん……、はァっ!」
 しかし、口には含んでも乳首そのものには舌も唇も歯も触れさせなかった。器用に乳輪を吸い、布地越しに味を見る。じゅっ、と水音が立った。
「ふ、あ」
「汗、じゃあない」
 舌の上にねっとりとした感触が乗る。匂いも味も薄いが、普通の体液とは違う。
「じゃあ、なんだろうね?」
 長く息を吐いて、ジョナサンは冷ましてやるようにディオのぴんと立っている乳首に吹きかけた。手と足の指をぎゅっと縮こませて、ディオはシーツを掴んだ。
「ちゃんと見てみなくっちゃあ……」
 濡れ染みのあたりを軽く爪で掻くと、薄布はすぐに裂けた。そっと優しく肌を傷めないよう、切り開いていく。布がきれいに裂けると、反対側も同じように切ってやった。
 ぷくりとした乳首は、赤くなって飛び出していた。上下とも服を着ているから、不自然に露出した箇所は卑猥に目立つ。その姿は、裸よりもいかがわしく映った。
 尖った乳頭にジョナサンは指先を軽くタッチさせる。ぷるりと胸が反応して、液が漏れ出す。
「白いね」
 指先に乗った少し黄みがかった白い液体をディオの眼前に出してやった。しっかと開いた目でディオは認めたが、首を振るだけだった。
「んう……ッ」
「もっと出せるよね、ディオ?」
「はう……っ! んッ……ア」
 大きな掌でジョナサンはディオの胸を寄せ上げて、胸肉をぐにりと圧迫させた。はちきれんばかりに腫れた乳首は、丸くなった先端の穴から乳を噴射させた。
「アうッ! くううう、んッ!!!」
 ジョナサンはディオの放った乳と覚しき液体を顔面に思い切り浴びていた。勢いよく放出はされているが、量自体は大したことはなかった。
「はァ……ッ、ヤ、いやだ……ッ! やめ、ろ、もうッ」
「もうちょっとだけ」
「やっ、や……ッ! うぐ、出るぅ、出てるうゥ……ッ!」
 両乳首の根元を摘み上げ、強く捻るとディオの悲鳴と共に乳は溢れ出る。最初に出ていたものと比べると粘度はなく、さらりとしていて、色も乳白色に変わっていた。しかし、揉み出せば出すほど、ぴゅるぴゅると乳は零れ出て止まらない。出す度にディオは背筋を曲げ、足先を伸ばした。
「はッ、や……やアアッ、ひやぁ……! やあッ、胸、やめ……ウあっ」
「ん……ッ」
 乳首を口に含ませてから盛り上がった胸部を手で押さえ、しっかりと奥から搾り出す。
 すぐにジョナサンの口中にはディオの乳汁が満ちた。喉を鳴らして飲み干すと、赤面したディオはへなりと腰から倒れてしまった。
「はぁ……、凄いな。飲みきれないよ」
 右胸から左胸に口を移して交互に飲むのを何度か繰り返しても、胸からはとろとろと乳が出続けていた。
「やっ、飲むなっ、ジョジョォ……ひ……っ、ン……!」
 身を溶かされ尽くしてもディオは抵抗しようとして、微かに残った力でジョナサンの前髪を引いた。
「ううっ、あう!」
 凝り固まった部分だけを口に入れて柔く歯で擦り、口の中で抽送させてやる。ディオはまた脱力して倒れ込み、寝台を揺らした。
 ディオが前髪から手を離すと、ジョナサンは乳輪ごと口に銜えて乳首は舌先で転がしてみる。くるくると捏ね繰り回し、舌先を尖らせて押し潰してやった。
「はぁ! ひっン!」
 思い切り身を仰け反らせて、ディオは触れられていない方の胸から乳を出した。咥え込んでいる方はジョナサンの口の端から乳がだらだらと溢れ出てしまっている。
「ディオ……赤ちゃん、欲しいって言ってたよね」
 片乳を口に入れたままでジョナサンはディオを見上げて言った。
「そんな……こと、言って……なッ」
「覚えてない?」
 そしてもう片方の乳首を親指の腹で押して、責めた。
「……ッぐ……ンン!」
 願望はディオの腹に眠っている。朦朧とした記憶の中でも、その発言は確固としてディオの脳に焼き付いている。
「だから、先に体がママになっちゃったのかな」
「はぐ……ゥ!」
 ジョナサンの言動にディオの肉体は自身の意思とは関係なく、従順さを示した。
「はあぅ……くう……ッう」
 いきなり鼻先に甘ったるい芳香が漂う。ジョナサンは濃くなったミルクの所為だと勘付いた。
 ディオの体は、主の意識と共に変化する。人間が何万年とかける進化を、ディオは自身の肉体の中で瞬時に完了させるのだった。自身が望む姿、自身が願う機能を、身につけていく。
 ディオの肉体は現在喜びに浸っている。ジョナサンの言葉に反応し、本人の思考よりも早く展開させていくのだった。深層心理に肉体は過敏だった。
「ちあ……うぅ……ディオはっ、ぁ……ッ! あう、く、も、……吸うなぁ、飲むなああ」
 口先ではそう言い放ち振り払おうとするものの、ディオの胸はジョナサンの唇に押し当てる形になって反ってしまっている。ぴんと立っている乳首は吸いやすく尖りきっているし、乳汁は温かくて甘い味をさせている。
「せっかくこんなに美味しくなったんだから、少しの間独り占めしたいな」
 背に腕を入れ、抱きかかえて唇を窄めて強く吸い上げてやる。胸の肉が持ち上がって引っ張られていくと、ディオは悲鳴じみた嬌声を高く上げた。
「はっ、ヒ、あ……ッ! ふっ、あくううううっん!!!」
 腰が二、三度ベッドの上にバウンドして、全身に震えが走った。ディオは涙と涎を流しっぱなしにして、天井を見上げていた。
 しばらく浅い呼吸が繰り返され、ディオは呆然としていた。ややあってジョナサンは、舐め回していた胸から唇を外し、寝台の上で膝立ちになりディオの全身を眺めた。
「駄目じゃあないか。おっぱい飲まれるだけでこんなにグチャグチャになっていたら、赤ちゃんが苦労するよ」
 目線を動かすのもディオは億劫だった。頭上からはジョナサンのくすくすという笑い声が聞こえてくるけれど、ディオは指すら思うとおりに動かせなかった。下半身はまだ痙攣し続けている。
「もっと慣れなくちゃね、ディオ」
 ジョナサンの声色だけは優しさを演出しているが、行いは変わらず苛め抜く方法ばかり好んでいた。
 いや、だめ、するな、やめろ、もういい。それらの類の台詞はディオの口から何百回、何千回と無駄に放たれている。いくら哀願しても、ジョナサンは手を止めない。
 しかしそれでもディオは抵抗せずには居られない性分なのだった。なけなしの力でディオは身を守るように手足を縮めた。
 足を曲げて丸めてみたが、ジョナサンは軽くディオの腰を持ってズボンの腰元を掴み、一気に引き抜いた。
 思わずディオは両脚を閉じてしまう。下腹部が濡れているのだ。
「……こっちも洩らしたのかい」
 脱がされた服にも、ディオが出してしまった証拠がべっとりとついていて、どうあがいても言い逃れられなかった。
「ぼくに断りもなく勝手に射精なんてしちゃいけないよ。……悪い子だ」
 わざとらしい口調で責め立て、ジョナサンはディオの枕元にズボンを投げ捨てた。
 鼻につく男の欲望の匂いがした。ディオは全身から汗を吹き出させて、白い肌を火照らせた。
「次、どうしても出したくなったら、ちゃんとぼくに言うんだよ」
「いい気に、なる……なよ……ッ、ジョジョ!」
 掠れ気味の声でディオは強がってみせる。上半身は乳首のみを露出させた服、下半身は一糸纏わない格好だ。こんな情けなき姿を晒せるのはジョナサンだからだった。むしろ、見せ付けているのだとディオは思い自分を保った。
「いい気? なるさ。なるに決まってるじゃあないか」
 腰元に巻かれていたローブのひもを解いて、ジョナサンは裸身になる。起ち上がった雄肉は芯を持って上向く。
 否応なしにディオの鼻腔がひくついた。
「こんなに清清しい気分で、君と一緒にいられるんだから。歌でも歌いたいくらいだよ」
「……そ、そうか……それは、良かったな」
 ディオは、目を伏せて横を向いた。正面にいるジョナサンを見ていられなくなったのだ。歯の根がうずく。腹や腰が一際重くなった。
「……やっぱり、照れてる」
「ふあッ……!?」
 ジョナサンは自身の根元を持って、ぴたりとディオの頬に肉棒を押し付けた。猛烈に嗅覚が犯されていく。
「ぼくが好きだって言ってから、君の態度はおかしくなったね。もっと前みたいに、してもいいんだよ……何にも恥ずかしくないだろう? ぼく達はいやらしいことをいっぱいしてきたじゃあないか」
 小鼻や口の際や、頬骨にジョナサンは亀頭をこすりつけて、洩れ出てくるぬるみをディオの顔に塗った。
「んっ、ヤっ……、うう」
「嫌? 何が嫌……? 君は散々これを好きだって言ってくれてたのに」
 唇の合わせの窪みに、ジョナサンは鈴口穴をぴったりとくっつけた。むんむんとした雄臭にディオは目元も口元も締まりがなくなってしまう。
 喉に唾が落ち、ディオはあっさりと押し負けた。
「んっ、んっ、んぐ……ッン」
 両手で屹立を支え持ち、喉奥まで深く飲み込んでいく。この息苦しさもディオにとっては不思議と心地よかった。
「ああ、ディオ……」
 太くしっかりと浮き立つ血管をざらざらと舌の表面で味わう。限界まで入れても、まだ手に余っているジョナサンのものに、ディオは恍惚とした。
 ジョナサンの熱い手は、優しくディオの髪を梳き、それから耳と額を撫でた。大切にしている、といった気持ちが手の動きから伝わってくる。
 吸い上げながら、ディオは収めていたものを口から抜け出していく。歯を立てないよう唇の内側を丸める。涎れやジョナサンの潤みがディオの唇と手指を汚していた。
「ハア……、ふ」
 横向きになって筋を舐め上げ、ディオは手指で雁首をさすった。洩れ落ちるねちゃねちゃとした粘った汁が手に糸を引かせた。
「んう、ンンー!」
 上辺を舌で舐めてばかりいたディオに、ジョナサンは少々強引に口を開かせて、先端をねじ込んだ。奥までは入れず、浅い場所で腰を早めに振ると驚いたようにディオは瞬きをした。
「ぼくも……、射精(だ)す時は、教えるからね……ッ」
 まだ極めるまではかかりそうだったが、あえてジョナサンは事前に知らせた。すると、ディオは、急にジョナサンの肉根を掴み指先に力を込めて、精を止まらせた。
「うッ、ディオ……!?」
 充血している性器から口を外して、ディオはジョナサンを細目で見上げ、「ここでは駄目だ」と首を振る。
「ディオ……?」
「口じゃあ、なくて……、ココで、しろ」
 指先が示すのは、ディオのへその下だった。
 腹の中にしろ、と暗に命じていたのだった。

top text off-line blog playroom