月海夜 29

 滴り落ちた精液でディオの会陰部はぬめっている。膝を曲げておずおずと開かれる脚の間に、ジョナサンは顔を近づけた。
 一度出しているにも関わらず、ディオのものは勃ち上がって期待している。
「欲張り……」
 おもむろにジョナサンは陰茎を咥内に誘い入れ、その下の秘孔には中指を添えた。
 口の中でひくひくとディオの牡茎は感じ入り、堅く閉じていた孔の入り口の警戒を解いた。
 いつもディオがしてくれていたように、ジョナサンは大口で頬張った。奥まで飲むと、鼻先にディオの恥部の毛があたった。ここも混じりのないブロンドだった。
「ふっ……、ひっ……」
 腹が上下して筋肉が縮小すれば、侵入した指が噛まれた。それでも構わず指を進ませると、中のどろりとした肉がざわめく。
「んっ、……んぐ、ふ」
 首を動かして唇で扱くと鼻息が荒くなる。吹かれた金糸がさわさわとジョナサンの肌を擽った。
「はう……うっ、んっ、んくッ! ジョ、ジョっ」
 尻は更に力を込める。一度達しているから、二度目までの限界の距離が近い。何度も極める度、ディオのその間隔は短くなる。一度目より二度目、そして二度目より三度目。終盤には、どこからが絶頂感なのかすら分からず、その境は失われる。
「教えて。言って、ディオ。顔を見せて」
 強張りを扱きながらジョナサンは尋ねる。愛撫している張本人なのだから、変化を手にして分かっているくせに、言わせようとする。意地悪くにやつくジョナサンに一矢報いたいディオは、腿を閉じてその顔面を挟み込んでやった。
「んむっ」
 内モモの肉質はむっちりとしていて、肌は汗ばみ湿っている。ジョナサンの頬肉とディオの腿肉はしっとりとくっ付きあった。
「マヌケな面しやがって、このっ」
 ぐいぐいとディオはジョナサンを締め付けた。これはこれで、いいものだとジョナサンは肉に挟まれながらも愛撫を続ける。体内に埋まっている指をほんの少し動かすだけでディオは喘いでしまうのだった。
「は、ンッ!」
 中指一本ですら、鳴き声が洩れる。内奥を知り尽くしたジョナサンなら、快楽点を突くのは簡単であった。
「んんっ、ンンぅ」
 舌がディオの亀頭部を舐めとり、中指は腹側のしこりを押している。先端から滲み液がとろりと出る。
「ね、ディオ……ちゃんと君の口から言って欲しいな」
「はぁあっ、うっ……んぐぅ」
 挟み込んでいた腿が浮き、ぷるぷると細かく震え始める。そして両脚が自然に開かれてゆき、ディオは観念した。
「う、ぐ……くぅ、来る、ぅ! で、出るっ、あっ、もう、あぐ、来て、ジョジョォォッ……ッ!!!」
 叫びと同時に、ディオは気を遣った。
 厚みのある手が巧みに摩り、精射し続けているディオのペニスを包み込んでいる。
「あっ、あっ、熱いいいいぃぃぃ、んっ! ひっ、あっ、あぅっ、あ!」
「ディオ……ッ! ディオ……ッ!」
 リズミカルに上下にこすり上げ、ジョナサンは精を促す。放出されていく精汁はディオ自身の腹や胸に飛距離を伸ばした。
「は、ひゅ……、んう〜〜〜ッ! うううう゛ん゛ッ!!」
 陰茎を摩る手も、中に納めた指も、同じように素早く動かされた。ディオは終わりのない淫戯に呻くしかなかった。
「ああ、なんて……ディオ……!」
「うぐぅぅぅっ、あっ、あっ、あぅううううううッッッ!!! ンンンンンゥウウウ!!!!」
 汗を撒き散らして、ディオはシーツの上で暴れ狂った。拳は赤くなる程握られて、背は何度も跳ねた。髪はぼさぼさになって乱れて、言葉にならない叫びを出している。
 そこには至上の悦びに苛まれる美獣がいた。綺麗だ、とジョナサンは一人呟いた。
 すると精液とは異なった汁が、ジョナサンが掻き上げる毎に舞い飛んでいった。
「ひっ、は……ッ、ふあっ、あっ、あっ、んっ……ううぅ」
 ディオの胸や腹には、精と乳とそれら以外の様々な淫水が撒き散らされていた。淫ら水は、ディオの顔にも雫を飛ばしていた。
 体中の筋肉から力を失わせたディオは寝台に横たわり、涙目で天井を見つめた。息をするのも、苦労している。
「よく出来たね。ちゃんと言うことも聞いてくれて嬉しいな……こんな風にいつも素直だといいんだけど」
 ジョナサンは指を抜くとディオの顔中にキスをして、頬についていた汁を舐め取った。
 それから耳や鼻先、顎に唇が触れる。口元だけは意図的に避けられている。ついにディオが焦れると、ジョナサンは自分の唇を指した。
「して、ディオ」
 首を持ち上げ、ディオは待ち侘びた唇同士のキスを自分からしに行った。ジョナサンは目を閉じ、動かずにそのキスを受ける。ディオは先ほどまで動くことすら辛かった身を忘れて、ジョナサンの背に腕を回して、夢中になって味わった。
 唇の交わりは、セックスの次に生命エネルギーが得られる。舌と舌が絡みあって、中から肉の柔らかさを知り、体内部にジョナサンの上質な生命力が入ってくるのが分かる。エネルギーは喉を通り、腹に満ちる。飢餓感は解消され、ディオの全身は多幸感でいっぱいになっていく。
 口付けは長く、ディオが飽きるまで行われた。その間、ジョナサンはディオの肩、鎖骨、胸へと手を滑らせて、肌を撫でる。
「んっ、はああ、はっ、あっ」
 両手はディオの乳首を摘み、また搾り出すような仕草で蠢いた。
「んんぅっ、んっ」
 ジョナサンの手首を掴んで、ディオはそこから引き剥がそうとする。
「どうして?」
 額と額を付けて、ジョナサンは小声で聞く。
「それ、……も、いい……ッ、アッ!」
 人差し指と親指の腹できゅっと乳頭を挟み揉むと、みっともなく甲高いディオの声が洩れ出た。
「ほら、好きなんだよ……ここ、可愛くなってる。ぼくに触られたがってるよ」
「ンン〜〜ッ、いっ、やめろおッ、出る、や、出るからぁ」
「何が出るの? ここ?」
 若茎は完全にでは無いが未だ硬さを維持している。指先がシャフトを撫ぜれば、ディオはキッとジョナサンを睨みつけた。
 右の手が胸を、左の手は下腹を弄る。
「ちあ、ちが……ッ、ぁやぅ、そこはぁッ、出な、……うううっ、胸、んっ、出て、や、もう、いやだ、出したくないッいいっ!!!」
 くりくりと指先で乳部を転がしていると、弄られていた片方から乳汁がぷつりと玉雫を出した。一滴出るとまた乳液は溢れ出し、ディオの悲痛な喘ぎと共にちょろちょろと流れた。
「あぁう、や、や……ぁ!」
「気持ち良さそうなのに、嫌なの? 痛い? ディオ、言ってよ。ぼくに全部教えて」
「出したく、ないぃッ」
「痛い?」
 乳汁が出ていない方の乳首をジョナサンは舌先でチロチロと捏ねた。起き上がった乳は、敏感で、対と同様に乳汁を零し始める。ディオは息を荒くして言葉未満の声を発している。
「気持ちいい?」
 乳輪から揉んでやれば、両乳から汁が一斉に飛び散った。
「良いなら、ガマンしないで。好きなだけしようよ。ディオが気持ちいいと、ぼくも嬉しい……」
「んっ、はう……ッ!」
 ジョナサンのベルベットボイスにディオの総身が総毛立った。とろけそうな台詞に、体が勝手に従順になる。
 好きだよ、愛してる、可愛い、綺麗、嬉しい……。ジョナサンがそう言うとディオは何とも思わないと脳を叱咤しても、命令は絶たれる。肉体は完全服従だった。なんて強い力なのだと、恐れすら感じる。だがジョナサンに愛されれば、恐れも悲しみも苦しみも、消え去るのだから、ディオの身体は抗えない。
「んっ、いい……きもち、い……あっ、ジョジョ、もっと、もっと、して、舐めろ、さわれっ」
「いい子だね。どんどん素直になるね、ディオ……そうだよ、ぼくを受け入れて」
 思考の杭が抜かれると、途端に快楽の感度が増していった。気持ち良いことを、良いと認めるだけでこんなにも変わるものかと、頭の片隅でディオは思う。
「ううっ、あうぅんんっ」
 ディオの望み通りにジョナサンは口唇で嬲ってやった。舌や歯が攻撃し、唇と指の柔い部分で慰める。乳汁は掬い取り、舐めてやる。
 破かれた服は、乳首の部分以外も既にぐっしょりとして濡れていた。ふと、引き裂いた場所から糸がほつれているのにジョナサンは気がついた。歯で糸を噛んで伸ばすと、布地からほどけていく。何かを思いつき、ジョナサンはある程度の長さになるまで糸を引き、丁度よい頃合に噛み切った。
 そしてぽっちりとしているディオの片乳首に糸を結びつけてみた。
「はっ……くっ……!? なにっ……する」
 結んだ糸の先に、もう片方の乳首も括る。硬く丸くなっているので乳頭の根元は糸を巻きつけやすかった。二重に糸を巻き、少しだけ真ん中を緩むよう長さを調節してジョナサンは器用に結んでやった。両乳首の下はリボン結びになっている。
「そのままの姿も綺麗だと思うけど、こうやって飾り付けるのも悪くないね」
 糸の真ん中を軽く引くと、二つの乳首は引っ張られて締め付けられる。
「うっ……! ん!」
 指や舌に比べればどうという刺激ではないのに、未知の感覚にディオは声も乳汁も洩らしてしまう。
「自分で持ってみて」
 糸の真ん中をジョナサンはディオに手渡してやる。弛んだ糸と胸の間に自分の指を無理やり入れられた。ジョナサンはディオの指を動かして、自慰を促す。
「こうして」
「う、くっ!」
 強く張った糸を弾かれると、振動が両の乳首に伝わって、更に硬く勃起してしまう。
「ね、どっちも気持ちよくなれるだろ。それに、どんどん糸が食い込んで……ああ、出ちゃったね」
 ぷしゅっ、と汁が飛び、またジョナサンの顔を濡らした。


 愛撫がひと段落すると、再びディオは唇を強請ってジョナサンの首を抱く。
 満足するまで口付けをさせ、落ち着くと行為は再開する。
 胸周りを丹念に愛し終え、ようやくジョナサンは他の部分に触れる。
 服を捲り、腹部を撫でた。湿った肌には、筋肉の溝に汗や体液が流れている。割れた腹のおうとつを一つ一つ確かめ指は膨らみとへこみをなぞる。
 臍の穴から、腰骨の出っ張った所、四本の指が蛇のようにざわざわと這いまわる。ディオは膝を立てて寝転び、時折息を吐くだけで後はジョナサンの好きなようにさせるだけだった。
 下腹の金色をした翳りに指が辿り着くと、髪の毛を梳かすのと同じようにジョナサンは細やかに指を動かしていく。
 立てられた膝を更に開いて、ジョナサンはディオの尻を持ち上げた。
「あ……ッ」
 肉をかきわけて、両手の親指が閉じている割れ目の奥を晒した。
 血流が勢いを増していくのがディオには分かる。胸の上の肌が、動いている。すぐに入れられてもいい、とディオは思っている。
 多分、ジョナサンはディオがそうされたいと願っているのを知っている。だから、しない。時間はじっくりとかけるつもりだ。
 まず、右手の薬指がゆっくりと侵入する。指一本くらいなら、今し方入れられていたので容易く飲み込んでいく。
「うあ、あ、あ、あ」
 一度に三本の指が割り込んできた。みちみちみち、と媚肉は強引に裂かれる。
 一旦奥まで突っ込まれたかと思うと、あっさりと引き抜かれる。
「あ……え、ジョジョ……何」
 ぽかりと秘部は口を開けて、濡れ光った。紅肉が元の形に戻ろうとすると、また指はぬるりと入り込む。
「ふ……っ! く」
「うん……最初とは全然違うね」
 そこは雌器官になってしまっていた。
 男(ジョナサン)の指と、雄(ジョナサン)の肉を知り、別物になってしまった。胸も、ここも、ディオはジョナサンによって作り変えられてしまっている。
「一番初めに君を抱いた時とは、違う」
「んん、んんん゛ッ」
 手首を回すと、中で当たる部分が変わってディオは足の爪先をシーツに立てた。
「ぼくの指に……、ぼくに吸い付くみたいだ」
「はう、うっ、あ! あう!」
「すごく……求めてくれてるって、感じる……」
 指はそのままで、ジョナサンは秘所へと顔が沈んでいく。
「んっ! あ! あああ!」
 指で開いた出来た間に、ジョナサンは舌を細めて差し入れてきた。
 窄まりの入り口付近と内側とで、舌はぬるぬると出し入れされる。表面と内面の両方が攻められて、ディオはわけの分からない声を止め処無く放っていた。
 秘部をぐじゅぐじゅに涎れ塗れにされて、ディオの膝はふしだらに開かれっぱなしになっていた。
 後は、もうジョナサンが欲しかった。ディオはこれまでと同じようにされるのだと思って足を開いたまま横臥した。
 所が、ジョナサンは身を起こすと、ディオの隣に並んで横になった。
「……んっ」
 軽い口付けをされると、ジョナサンは微笑む。
「ディオ、して?」
「……え?」
「ディオが、して」
 腰を抱いたジョナサンは、自分の腹の上にディオを乗せる。そして、手を離して顎をしゃくった。

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