ずるずると愛し合ったって仕方ないだろう、こんな意味のない関係　４

　　　　　五


「う……くそお……」
　ディオが目覚めると、まだ早朝だった。朝日があと数分もすれば、登り始める時間だ。
「頭が……」
　部屋は真っ暗だった。ディオは痛む頭を抱えて、身を起こそうとして違和感に気が付いた。
「う……、重い」
　布団にしては妙に熱くて重く、そして湿っぽく肌に張り付く。
　薄闇に目が慣れると、ディオは胸の上の物体を凝視した。
「な……っ！？　ジョジョ……ッ！？　……あッ、ふ……ッ」
　ディオは、体の異物感に、眉をひそめて、まさかと鳥肌をたてた。そのまさかの想像通りの現実にディオは衝撃を受けた。
　すやすやと眠る姿は、幼い少年そのものの寝顔であった。
　だが、性器と性器は未だ繋がりあったまま、入っていた。いくら萎えているとは言っても、充分過ぎる存在が体内にあった。
　満足そうに眠っている幼子の面構えで、とんでもない猥戯を仕出かしている。
「く、なんで、……っ、うぐ、どけ、起きろっ！」
「ディオ……？」
「この阿呆が！　さっさと抜け！　おれの上からどけ！」
　半分寝ぼけてうとうととした状態のジョナサンの頬をディオは、はたく。ぶたれた頬の痛みで目を覚ますと、ジョナサンはのろのろと体を起こして、肉欲の塊を抜き出していった。
「く、くそっ、この……、」
　抜き出ていかれる不快感にディオが身を震わせた。
「な、なんだ……う、うあ……っ」
　ジョナサンが全て抜けると、栓が無くなった穴からは溜まった精液が、どろどろと半透明になって溢れてきた。
「や、……うぁ、うううぅっ」
　尻の穴に力をいれようとしても、うまく穴を窄められずに、ディオは気色の悪い感覚に呻くしかなく、シーツに爪をたてた。
「凄い、いっぱい出てる……」
　ディオの足の間に染みが広がっていった。これら全て自分が出したものなのだと思うと、ジョナサンは感慨無量に、流れていく様を眺めた。
「……あ、……く、ジョジョ、ぼうっと見ていないで、……そこの机にあるタオルを、持ってこいッ！」
　ベッドサイドにある机の上に、白いタオルを指されて、ジョナサンは命令に従った。
「はい。……あのディオ、大丈夫？」
　ジョナサンからタオルと受け取り、ディオは、自分の指を穴に入れて、精液をかきだす。
「ふう……、くう……ッ」
　ジョナサンの問いかけに返事はせず、ディオは中指で穴をほじった。腹の奥まで入れられた精汁は、指を突っ込んだくらいでは出て来てくれなさそうだった。
「は、う……ッ、なんで、こんな、ううっ、ジョジョ、おまえ、おまえがおれの中に、……っ、こんな大量の、何回しやがったんだ！？」
　ディオは目を釣り上げてジョナサンを睨む。怒られていても、ジョナサンは、ディオの下半身を見ていた。赤く腫れている秘孔は、とてもいやらしかった。
「わかんない」
「分からないじゃあないだろッ！」
「た、多分、二回……」
　ディオはかっと赤面して、精液を拭っていたタオルをジョナサンに投げつけた。
「ぼくが、酔っているのをいいことに、こんなことしやがって……、絶対に許さないからな！」
「でも、ぼくはディオに言われて、……それでッ」
「でも(、、)も、だって(、、、)も無い！　ああ、う、……気分が、わるい……ッ」
　真実を話しても、記憶のないディオにとってどれもがジョナサンの言い訳にしか聞こえない。そして、自分が誘い込んだこともすっかり忘れて、ディオは怒り狂った。
　叫んで腹に力を入れたので、尻の穴からは奥に溜め込まれた汁が流れ落ちてきた。
「く、……まだ、うぐ、……あ、ぅ」
　腰を上げて、ディオは再度指を入れた。仰向けでは指が入れづらく、体を反転してうつぶせて、尻を割り開いた。
「見て……ないでっ、とっとと出て行け……ッ！」
　寝台に座り込んでぼんやりしているジョナサンに向かって言ったが、熱っぽくなった体から発せられる言葉に迫力はなかった。
「く、うぅ……ッ！」
　精液のぬめりで、指を二本突っ込んで、ディオは穴の奥にまだ入っている汁を出そうとした。
「ディオ……」
　夜中の彼の甘やかで優しい姿とは打って変わって、ジョナサンを叱りつけている姿は、行動と言葉が噛み合わなくて、何だか滑稽だった。
　あれほど、疲労し倒れるくらい出しても、ジョナサンはまた自分が興奮していくのが分かった。
　犯した孔を目の前に曝け出されて、生まれたての雄がじっとしていられる訳がなかった。
「うッ！」
「ごめんなさい、でも、でも、ぼく、」
　ディオは背に伸し掛る重みと、粘膜にひたりとくっついた熱源に、体を硬直させた。
「やめろ、……、何を考えている……ッ！」
　震える声を悟られまいと、ディオは低い声で言った。
「大丈夫。昨日は、いっぱいディオを喜ばせられたから、だから」
「何を、……あッ！　あああ゛ッ！　うぐ、あッ！」
　固く強ばったジョナサンのモノが、ほぐれた孔に沈んでいった。
「うっ、やめ、ううッ、抜けぇッ！」
　腰骨を持って、ディオの尻が貫かれている所をジョナサンは見下ろした。
　抵抗してディオは尻を振り、侵入を阻んだり、逃げようとしたりして体を捩らせる。だが、媚肉だけはディオの意志とは反対に、ジョナサンを歓迎した。
「あっ！　ああッ！　くうっ！」
　肉棒を全てディオの体内に入れ終わると、ジョナサンは、動かせないようにしっかと尻を掴んだ。
「ぐ、うぐ、……ひ、ひっ、うう、うっ、おれはッ、君のおにいっさんなんだ……ぞっ、だからっ、こんなことしちゃっ、あッ、いけな……っ、い……ああッ！」
　ディオの肉の中で、ジョナサンは大きく脈を打っていた。泣き出すディオに欲情し、昨夜とは別の人を犯している気分になる。
　誘惑の麗人と、貞節の美人、同じ容姿をしているジョナサンの憧れの義兄が、異なる魅力で現れる。
　どちらも正しくディオであり、そして自分の義理の兄だ。その関係にジョナサンはより興奮した。
　どんなに今のディオが拒んでも、肉体は昨日の夜と同じだ。秘孔は、次第にヒクヒクと、ジョナサンのペニスを甘噛んでくる。
「ちゃんと、気持ちよくするから、だから、ディオ……ぼくを、」
「あっ、アアっ！　いやッ！　嫌だ！　だめ、だめっ、動くなァッ……！」
　いやいやと、ディオは身を振る。しかし、ジョナサンの動きを止められない。
　反対に、抽送を助ける動きとなって、一層激しく結合部分は音を立てていく。
　ばちゅッ、ぱちゅ、ばちゅっと肉がぶつかりあう。
「んあッ、ああ、だめぇ、だめだァ……抜いてッ、抜いて……ッ！　ああッ！」
　逃げるのを諦めたディオは、『抜け』と命じず、『抜いて』と哀願する。
　弱々しく喘ぎながら願うディオの憐れな背中にジョナサンは、唇で慰めた。
「ああ、ああッ！　もう、しないでッ！　するな、するなッ、やめ、やめぇッ！」
　細かく腰を突き入れて、肉襞にペニスを擦りつける。
　始めに大きくなった時より、ディオの体の中で扱いていると、質量が増していくように思えた。
「あ、出る、出る……ッ！」
　ジョナサンは、ディオの耳元で、小さな声で頂点を迎えるのを教える。
　また奥で出してしまいたいと、ジョナサンは、深く入れ込んで息を荒くした。
「やッ！！　ああッ、いやだ！　もうやっ、奥だめ……ッ、いっ！」
　体内で出されるのを恐れて、ディオは首を横に振って、体を暴れさせた。
　逃げ惑う体を追いかけてジョナサンは押し進める。
「いやあッ！　だめだッ！　中に出すなッ！　ぅあッ！　ああぁああッ！」
　やめろ、嫌、駄目、と言われると、ジョナサンは猛った。そして、いけないと知ると、したくなった。
　そうでなくても、中に、ディオの尻の奥、腹に放出するのは、とてつもない快感があった。
「はぁッ……！　あ……はぁ、」
「んうッ！？　ああ、あー……ッ、ひ、ヒッ、……、アッ、う」
　ペニスがディオの肉の中で精液を噴出するごとに、びく、びくと脈打って、最奥で出ているのを二人に知らせる。
「あッ、まだ……かッ？　あ、あぅッ」
　ジョナサンが腰を揺すい、残滓を扱き出す。
「ん、まだ出る……」
　昨晩、大量だと言われるほど出しても、ジョナサンの体には新たな精子が蓄えられて、そしてディオの腹に注ぎ込まれていった。
「はぁ……全部、出た、よ……」
　終わりを告げて、ジョナサンはディオの背に身を寄せる。
「ん……ふっ、う……ッ、うう、なんで、う、」
「ディオ、……ぼく、はやく……大人になるから……」
「う、……ひっ、く……っ、いいからぁ、抜けよお……ッ」
　ディオは、止まらない涙で枕を濡らし続けている。
　涙が、気持ちよくて流れているものではないのだと、ジョナサンにも分かった。それでも、ジョナサンはディオの中に居て、甘えて背に抱きつく。
「そしたら、ディオ、ぼくと、結婚して下さい」
「……あ……？　え……？　はぁ？」
　枕から顔をあげて、ディオは、気の抜けた声で言った。驚きで涙が止まり、ディオは振り向いてジョナサンを見る。
「何を……、おまえ、まだ酔ってるんじゃあ」
　ジョナサンは首を横に振り、違うと否定した。
　そして、可愛く尖ったディオの唇に、触れるだけのキスをした。
「おねがい、ディオ」
　出来るわけない、するものか。ディオは、そう思っている。けれど、ぎゅっと、抱きしめてくる手はとても必死であったので、あどけない少年の夢を壊せなかった。こんなことをさせられても、ディオにとって、ジョナサンは大切な弟だった。
「そんなこと……、……う、……このぼくのひとりくらい養えるようになってから言うんだな！」
　ディオはジョナサンのつんとした鼻をつまんで、言った。
　少年は、ぱっと明るく笑顔になって、大きく
「うん！」
　と明るい返事をして、またディオにキスをした。

　数年の後、ディオはジョナサンの執念深さを実感する羽目になる。



終