花園監獄 2
部屋の中心にある古いソファーにジョナサンは腰かけ、ディオを膝の上に乗せました。「な、何するんだっ! ジョジョ……ッ!」
「君には、……お母さんやお父さんがまだ必要なのに、早くになくしてしまって、それはとっても可哀想だってぼくも思うよ。」
「だ、だからっなんだ! 離せぇっ!」
ジョナサンはディオの腰に両腕を回して、しっかりと抱きました。腕の力はディオが多少暴れても、簡単には振り解けない強さでありました。
「でもね、どんなに君が可哀想だからって、何でも許されるわけじゃあない……。」
ジョナサンは静かにディオの耳元で言いました。
「や!」
ディオは嫌がって、頭や体、手足をばたばたと動かしました。ジョナサンは抱えていた手をはずして、今度はディオを足の上にうつ伏せに寝かせました。
そして、起き上がらせないように背を押さえつけると、片手でディオの尻を持ち上げました。
「嫌だ! 何!? イヤだァッ!!」
得体の知れない恐怖にディオは体を震わせて、尚暴れました。
「悪いことは悪いって、叱ってあげる人がいなきゃいけないッ!」
――バシン!
「イヤァッ!!」
ジョナサンは服の上から手の平で、ディオの尻を強く叩きました。
甲高い叫び声が暗い部屋にきんと、響きました。
「父さんも、君をとても可愛がってくれるけど、父さんは君の父さんじゃあないから、」
――バシンッ!
「ヤァッ!!」
続けてジョナサンは手を振り下ろしました。ディオは足をばたつかせます。
「だから、」
――バシッ!
「やうッ!」
言葉の間に、ジョナサンは手を尻の上に打ち付けました。
まだ、ディオは逃げ出そうとして体を動かしておりました。
「ぼくが、君を躾てあげるからね……」
冷たくジョナサンは言い終えると、高く上げた手をディオの怯える尻に落としました。
「あうっ!」
数回、打たれた尻は震えながらジョナサンの目の前で揺れておりました。
ディオは声を噛み殺して泣き、時折咳き込みました。
ジョナサンはディオの丸い尻を、今度は優しく手で包んで丸みを撫でました。また打たれると思った体は、ジョナサンの手に身を固くして緊張しておりました。
「泣いたってダメだよ、やめてあげないから……。」
そして再び、ジョナサンはディオの尻を打擲いたしました。
肉は打たれると、身をびくびくと痙攣させました。
ジョナサンは心の中で数を数えて、ディオの尻は叩いていきました。
十回ほど、服の上から叩いたでしょうか。
ディオはもう諦めたかのように、大人しく体を投げてジョナサンの膝の上でぐったりとしておりました。
ようやく暴れなくなったので、ジョナサンはディオのズボンに手をかけました。
「や! なっ! なんでっ! なんでぇっ!」
「直接素肌を打つんだよ、今までのはただの練習さ。」
ズボンを下ろしてやると、つるんとした小さく丸い尻がむき出しになりました。服の上から打たれた所為で、尻全体がほんのりと桃色に色づいておりました。
「やめぇっ! ぃ、やだってば……っ!」
ディオは、膝に引っ掛かっているズボンを穿こうとして手を伸ばしましたが、その手をジョナサンに押さえつけられてしまいました。
「まだ元気みたい、これならまだまだ打っても大丈夫そうだね。」
「いっ! やだああっ! ァぐっ!」
ジョナサンはまず軽く、手の平を打ち付けました。
小気味のいい音を立てて、尻は打たれました。
肉の弾かれる音を聞くと、ジョナサンの胸にあったむかむかした気持ちが消えていくようです。
「この可愛いお尻が真っ赤になるまで、するからね。」
「いやあ! いやッ!」
――パチン!
また肉が弾けるいい音がしました。
打たれた尻肉はお菓子のプティングみたいにぷるぷるとして、柔らかでありました。指を差し込めば、すぐに崩れ去ってしまいそうに壊れそうでした。
「やっ! アッ! いやっ! あうッ!!」
ジョナサンは、だんだんと打ち付ける速さをあげていきました。
まるでディオの尻を打楽器のように扱い、叩く毎にいい鳴き声をあげるディオに、ジョナサンは躾ける以外の意味の悦びを見出しておりました。
「はぁ……、はぁ……、ほら、言うこと、あるんじゃあないのか……ッ?」
ジョナサンは言いながら、左の尻たぶを叩きました。
「ひぃやッ、ひゃっ……もう、もうやだっ……」
「やだ、じゃあないだろッ!」
そして、今度は右の尻たぶを叩きました。
尻は腫れて、真っ赤になる頃でありましたが、暗い部屋の中ではそれも確認は出来ませんでした。
ただ打たれたせいで、腫れていましたので、ディオの尻肉はじんじんと熱を持っておりました。
ジョナサンは尻をたまに撫でては、その熱の高さを確かめたのでした。ジョナサンの手も何度も打ち付けておりましたから、掌は熱くなっていましたが、それよりもうんとディオの尻は高い温度であると感じました。
「君は、謝るってことを知らないのかっ!」
両の尻の真ん中を強く打ちました。びくりびくりとディオの背が波打ち、膝から力が抜けていきました。
「ごめんなさいって! 何故! その一言が言えないんだ! 謝れ! 謝るんだ!」
「やあっ! いっ! 痛いっ!! ひぎっ!」
今まで何をしても、ディオは頑なにジョナサンに謝罪はしませんでした。。
悪事がばれてジョナサンに怒られても、決して詫びはしないのでした。
「ひっ、ひっ……ひっぅ、う、ううっ、んっ」
ディオはジョナサンのズボンの膝を濡らすほど泣きじゃくりました。湿った感覚にそんなにも泣かせたのだとジョナサンは知り、胸を痛めました。しかし、それほど涙を流してもディオは絶対に謝りませんでした。
「ごめんなさい、だ。言えばいいだろ、それで許すと言っているんだ。ディオ。」
「うっ、ひっく、……う、……、んくっ」
ディオは押し黙ってしまいました。謝り方を知らないのだとジョナサンは思って、言い聞かせてあげましたが、その優しさは無駄でありました。
謝罪を知っていても、その言葉を口にしたくないと、ディオは意地を張っているのです。
「なら……ずっと耐えていればいい……ッ!!」
――バシィッ!
「ぅあうっ!」
肉の盛り上がりの始まりをジョナサンは叩きました。
ディオの尻は、右も左も、尻という尻の部分全て打たれて尽くして、赤くなっておりました。
白くてきれいな肌であった尻は、痛々しく腫れて大きくなっておりました。熟れたトマトが今にもはちきれそうなほどに実を育てあげている様子に似ておりました。
「ひっ、ひうっ、うっ、あうっ!」
普通の折檻ならここまでする必要はありませんでしたが、ジョナサンは日頃の鬱憤を晴らすように、叩き続けました。
「ディオっ、謝るんだっ!」
「あっ! んううっ、んっ、うっ、くっ」
首を下に向けて涙を流しているディオのあごを、ジョナサンは無理やり持ち上げて、言い聞かせました。
ディオはジョナサンの腿の上で、尻を上げて首を上向かせられて、辛い体勢の状態で数回の打擲を我慢して受けました。
「ひう……っ!」
顎を持っていた手に、温かな水が触れました。
ディオの流した涙が、ひとしずく零れました。
「涙……。」
手入れのされていない曇り硝子の窓から、月明かりが差し込みました。頼りない光でも、真っ暗な部屋には十分な明るさでした。
ディオの小さな顔がその光の下に照らし出されました。
ズボンに感じていた湿りで、ディオがどれほど泣いていたのかは知っておりましたが、ジョナサンはディオの泣き顔を見るのは初めてでありました。
「ん、く、ひっく、ひっ、……うっ、……」
強気な角度で生意気な表情を作り出している眉毛が垂れ下がって眉間に皴をつくり、いつも自分を睨み付けてばかりの大きな琥珀石の目は水溜りになって、涙の川を頬にいくつも流していました。
唇だけが反抗心をむき出しにして、歯を食いしばって痛みや屈辱に堪えております。そこだけが、可愛くない。ジョナサンは歪んだ欲望に火が点きました。
雲が月を隠してしまう前に、ジョナサンはまた手を振るったのでした。
「ぃあっ! 痛いっ!」
噛んでいた唇から歯が外されて、開けた口から悲鳴が上がります。
よく見れば、余程強く噛み締めていたのでしょう。小さな唇は打たれた尻より真っ赤であります。血を塗ったようでありました。痛々しくもあり、幼子に不似合いな色っぽさがありました。
窓硝子の格子が、風に吹かれてがたがたと揺れました。風の訪れを伝えれば、また月明かりは雲に隠れました。
そうして、小部屋は元の真っ暗な空間に戻っていきます。
ジョナサンは、ディオの顎から手を外しました。ディオの身がほっとして脱力すると、今度は脇に両腕を入れて抱き上げました。ディオの膝に引っ掛かっていたズボンが邪魔だったので、靴と一緒に抜き取りました。ディオは抵抗しようとしましたが力はなく、ジョナサンは赤子を扱うように簡単に出来たのでした。
下半身は見事に裸に剥かれました。大嫌いなジョジョに正面から抱っこされて、暗闇で顔が見えなくとも嫌でたまらないディオは、とにかく腕から逃れようとして手足をばたばたと暴れさせました。
「まだ元気だね、ディオ」
ジョナサンは再び、ぱちんと、尻を打ちました。
「や!」
尻を打たれると、ディオはびくびくとして身を縮めて大人しくなりました。
この頃になりますと、ディオは抵抗はしても、余計な口答えをしなくなりました。次にジョナサンに何をされるのかと、怖がっているようでありました。
だけれども、絶対に謝りはしませんでした。
「君は本当に悪い子だ。」
ディオの体を抱き寄せて、ジョナサンは豊かな黄金色の頭髪に触れました。ディオはすっかりジョナサンの手を恐れて、次にどのような乱暴をされるのかと身構えておりましたので、かたく瞼を瞑りました。
「ごめんなさい、が言えないその口にもお仕置きをしなくっちゃあ……」
ディオの片方の頬をやさしく指先で撫でながら、ジョナサンはゆっくり言いました。そして、怯えて黙る唇に自分の唇を押し当てました。
「む……うっ……っ!? んっ!? んんっ、んんん!」
一回り大きな口が、ディオの小さな赤色の唇をまるごと口の中に収めるのでした。驚きと恐れで、ディオはジョナサンの口の中で喚きました。
「んん! んんっ!!」
嫌いな相手の名を呼び、動かない胸板を叩いて、ディオは息苦しさと、気持ち悪さから解放されたくて訴えました。
しかし、ジョナサンはさらに深くディオの唇を銜え込みました。
「んーんっ! ん、んんっ! む、……はぁっ、……んんっ!」
一呼吸分の間だけ口から離されて、息を大きく吸い込むと、またジョナサンはディオの口を食べていきました。ディオは泣くのをやめて、得体の知れないオバケにでも会ったように、目を開いたままジョナサンを瞳に映し続けていました。
「言うことがあるだろう?」
ジョナサンはディオの唇を舐めて、殆ど唇と唇を触れ合ったままで聞きました。
「ディオ、ぼくに言うことは?」
目の前の少年が、すっかり姿を変えていることにディオは今気づきました。得体が知れないから怖いのではありません、ジョナサンそのものが、けものに見えるのでした。彼の目は深い底のない闇の色をしていて、ディオは光のない部屋でもその冷たさが分かりました。
「ご、ご…………さ……ぃ」
思わず、ディオはあれほど口にするものかと意地になっていた言葉を言ってしまっておりました。
「聞こえない、聞こえないよ。」
ジョナサンは唇を強く押し当てて、ディオの尻を抓ってやりました。柔らかい肉はつまみやすく、指先でぎゅっと抓ると、ディオは鼻から息を漏らして泣き声をあげます。
「いっ! 痛いっ! …………ご、……ごめ……ん、……なさい……」
「そうだよ……言えるんじゃあないか。」
いいこ、いいことディオの頭を撫でてやると、我慢していたのか張り詰めていた気が解けたのか、琥珀石から大粒の涙が溢れて、ディオの桃色に染め上がった頬を濡らしていきました。
「ごめ、な、さ……っ、い……っ、ぅ、ひっく、」
「いけないことをしたら、そう言わなくちゃ駄目だよ、言わないと、……もう分かっただろう?」
「ごめ、……ひっ、く、えっ、…なさい、う、え、」
ディオは、やっと年相応の顔つきで泣き出したのでした。ディオが落ち着くまで背を何度も撫でてやり、ジョナサンは優しくしっかりと小さなその身を抱いておりました。
ジョナサンのシャツの胸元が湿り、ディオは体の水を枯らすほど涙を流しました。やがて泣き疲れて眠りに落ちるまで、ディオは繰り返しごめんなさいを口にし続けたのでした。
寝てしまったディオの体をソファーに横たえて、ジョナサンはズボンと靴をはかせてやりました。
正確な時間は分かりませんでしたが、きっと父親が帰ってくる時分だろうとジョナサンは感覚で掴みました。時計は落とされた時から止まってしまって役には立ちませんでした。
「父さんに修理できるか、聞いてみなくっちゃなあ……」 ジョナサンは自分のポケットから傷ついた時計を取り出して、慰めるようにその表面を指の腹で撫でました。
ディオのことを言うつもりはありませんでした。
叱られるのは自分だけでいいとジョナサンは思ったのです。ディオには充分な仕置きは致しましたので、これ以上の仕打ちをしようとはジョナサンは考えません。それに本当のことを父に話しても、父親はディオを怒れないとジョナサンは知っていましたから、これでいいのです。
そろそろこの部屋から出なくてはいけません。ですが、ジョナサンは深く寝入ったディオの顔を見つめてぼんやりと床に座り込んでいました。
「ディオ……」
涙のあとが乾いてきて髪の毛が張り付いているのを、そっと指先で取ってやりました。
目元や鼻頭が泣きすぎて赤くなっております。癒してやりたくて、ジョナサンは赤い肌の上を唇で掠めていきました。そして最後に、何度も噛んでいた唇を指の腹で撫でて、静かに口付けました。
「ぼくはね……、君が……」
そう言いかけて、ディオの「ジョジョなんか大嫌いだ」という、ディオの口癖を思い出してジョナサンは唇を結びました。
言葉に出来ない代わりにジョナサンはもう一度優しいキスをして、ディオの身を抱き上げました。
後日、どうしてあんなに惨い真似が出来たのだろう、とジョナサンは自分が怖くなりました。
あの部屋に置かれていた、数々の残酷な道具を見て、ジョナサンは、いつか父が言っていたご先祖さまのことを思い返しました。
秘密の隠し部屋には、ジョナサンが小さな頃、空想したように、とてもおそろしい魔物が住んでおり、悪い子どもを懲らしめてくれるのだそうです。
魔物の力を借りて、愛する子どもを痛めつけられない親に代わって、子どもにお仕置きをしてくれる……。
ジョナサンは、またディオが悪いことしたら、この部屋に連れて行こうと決めておりました。
そして、ひそやかにその日を楽しみに待っているのでした。
終