面従腹背 2
まずは親指に力をこめて、僧帽筋の周辺を押した。肉が固くなっていたらそこをよく揉みほぐすと良いのだと先輩が言っていたことをジョナサンは思い出す。筋肉の緊張を解きほぐしてやることで、体の動きは抜群に良くなるのだそうだ。とは言っても、心地いい力加減を知らないジョナサンは、ほぼ実験的に行うしかない。ぐっと力を入れれば筋肉と筋肉の繋ぎ目にぐにりと指がめり込んでしまう。
「ッ、つぅ……」
「ああ、ごめん、痛かった?」
「この馬鹿力が……ッ!」
――成る程、筋肉が押し返すくらいの力加減が丁度いいのかな。
込めすぎていた力を緩め、ジョナサンからしたら弱いと思う程度で揉む。
「……っ…………う」
ディオの様子を見て、即座に微妙な力の塩梅を理解した。何も言ってこないのは、イコール良いということだ。
「……はぁ……」
吐息はやけに艶っぽくて、ディオの首と耳は火照ったみたいに真っ赤に染まっている。ジョナサンは、きっとディオの顔も赤々としているのだと思った。
そっと覗き見てみたくもなったが、今機嫌を損ねたらやめると言いかねないのでひとまずは我慢であった。
ジョナサンは丹念に肩全体を揉んでいった。初めて行うわりには、おそらく「上手い」部類に入るのだろう。手や指の肉付きに温度、力の入れ具合、ディオにとってジョナサンの動きひとつひとつが恐ろしかった。
触れた瞬間から伝わってくる何かが、ディオの神経を狂わせていく。
「ん、……ンン……ッ」
ディオは更に人差し指を強く噛んで、ひたすらに耐えた。少しでも気を抜くと、コントロールのきかない予想外の声が上がってしまうからだった。
それが痛みならまだマシだった。体はそれに耐えられる強さがあるからだ。
だけど、これは痛みでも無ければ、不快でもないから、ディオは自分が許せなかった。
――こんな……気持ち、いいだと……ッ?!
それもリラックスの意味ではなく、快楽としての意味なのだからディオは身に起きた現象を信じられないし、信じたくない。
「ンく……ッ」
『嫌ならやめていい』と言われた手前、ディオはなかなか終わらせる為の言葉が出せずにいた。
ここで、もういいと言えば、まるで降参したと取られてもおかしくない。それは負けと同意義なので、絶対に言いたくはなかった。
ディオは妙なところで意地を張るので、ジョナサンもそこで張り合ってしまう。
互いに譲る気など無かった。
何を以ってして、勝敗を分けるのかは定まってはいないが、ジョナサンはこう考えた。声を出すまいとしているから、とりあえず、そこから崩していきたい。と。
「肩は大分ほぐれたね、でもディオ」
「なんだ……」
「勉強熱心なのはいいことだとは思うよ、君のそういった所を素晴らしいとぼくも父さんも思ってる」
手が離れて、明らかにディオはほっとして詰めていた息を吐いた。
そして、緊張感が漂っていた肩から力が抜けていくのがジョナサンの目には映った。
「でもね、何事も程度ってものがあるよね。君は時々無理をしすぎるから、父さんも心配してるんだ。勿論ぼくもね」
一瞬の隙があった。
それを見逃さなかったジョナサンは、ディオの肩口に引っ掛かっていたシャツを下に一気にずりおろした。
「アッッ!?」
ボタンは腹の真ん中ぐらいまで外してあったので、少し手をかけてやるだけでシャツは簡単に落ちてしまった。
「君の体は随分と疲れているみたいだから、もっとほぐさなくっちゃいけないね」
「なっ……どこ触って、る?! ……ン゛!」
ジョナサンの手は肩から二の腕へじっとりとした手つきで移動し、そのまま胸元へと渡った。流石にディオも気付いているだろう。何の意味がこれにあるのか、ということに。
そしてこれも賭けだとジョナサンは思う。
「このあたりも固くなってるんじゃあないかな。……あれ?」
「ふ、あッッ!」
手の中は膨らみも何もない平坦な筈の胸だったが、収めた感触でジョナサンはすぐに違和感に気付いた。
ほどよい筋肉と脂肪の混じったディオの胸に指の腹が少し沈む。弾力があり固すぎず柔らかすぎず何とも言い表しにくい感覚がジョナサンの手のひらに広がった。
『生きた肉』だと漠然とそんな言葉がふっと心に浮かんだ。そこは生暖かく、しっとりと濡れている。
「う、ぐぅ……! そん、なトコ、……いい! しなくて! するなぁ!!」
噛んでいた指を離して、ディオはジョナサンの腕を掴んで爪を立てた。それでも声だけは出すものかと歯を食いしばっている様子がジョナサンからも窺い知れた。
ジョナサンの両の手はぴったりとディオの両胸に触れていて、丁度掌の真ん中にぷくりとした感触がある。触れた瞬間こそ変化は見られなかったそこが、微妙にこすれたり胸を揉みしだくと、だんだんに存在を主張しだしてきた。
「硬くなってきてる」
そこを押し潰して、ジョナサンは少し意地悪く言い聞かせてやった。そろそろディオも音を上げるだろうか。
ジョナサンは別に鬼でも悪魔でも無いので、『お願い』でもしてくれたら、この無意味な行為をやめてもいいと思っている。大事なのは、何かひとつ勝りたいという気持ちだった。
そんなのはつまらないプライドだと言われるかもしれないが、そのどうでもよい事こそが人生においては大切なのではないかと考える。単純に悔しかったから、とも言えるだろう。
「ううッ……んぅぅ……!」
それでもディオは口を閉ざしていた。しなくていい、するな、とは言われたが、それはジョナサンの欲しい言葉ではなく命令だった。なので、ジョナサンは無かったことにした。
「よく見せて御覧、ディオ」
後ろから抱える様に胸を揉んでいたジョナサンは、そこから離れて、ディオの前へと回った。
ようやく顔が見れると思うと、意識もしないのに動悸がする。きっと白い頬が真っ赤になっているんだろう。
突然目の前に表れた男に、ビクリと全身を震わせて、ディオは咄嗟に胸を隠した。腰に絡まっているシャツを手繰り寄せてなんとかして着てしまおうと、珍しく慌てた様子だった。
「どうして隠すの? ディオ、君ってあんまり体を見られたくないんだね」
思えば、同じ家で暮らして同じ学校で過ごして、同じ部活までしているのに、未だにジョナサンはディオの着替えを見たことが無かった。強制することでもないので、わざわざ「一緒に着替えないか」などとは言う訳もなく。同性の裸に興味がある訳でもないので、これといって気に留める必要は無かった。
ただ異常なまでに、胸を隠すディオには流石にジョナサンも好奇心が湧いた。あのディオが隠したいという秘密なら気になって当然だった。もしかしたら弱みを握れるかもしれないと、ジョナサンの中にある悪童の邪心がひそかに息衝く。
改めて、ディオの顔を近くで眺める。
やはり予想通りにディオの白い頬は真っ赤になっているし、耳も首元もじわりと汗ばんで湯気が出そうなほどだった。息遣いは微かだが荒い。
不愉快そうに眉根を寄せているが、目つきは変わらず鋭くて、ジョナサンは「可愛くない」と思った。泣きっ面でもしているのかと期待していたのだ。
噛み締め続けていた唇は、血が滲んでいると錯覚しそうな程赤く充血している。そしていつもは皮肉っぽく歪んでいる唇が、今は閉じられてだんまりを決め込んでいる。
ジョナサンは胸が高まるのを止められなかった。あのディオが、こんな姿をしているだなんて、誰が信じるだろうか? あのディオが、着衣を乱して、顔を真っ赤にさせて、なんにも言えずにいるだなんて!
それだけでも、充分にジョナサンは優越に浸れた。このディオだからこそジョナサンに授けてくれる、何者にも与えられない満たされた感情だった。
「手をどけてよ」
「いい、……もういい!」
「何がいいの」
「もうしなくていい! やめだ。ぼくに、触るんじゃあないッ!」
「しろって言ったり、やめろって言ったり、君ってワガママだよね。でも」
部屋にある置時計がぼおんと鳴って、時刻を示している。それはジョナサンのお爺さんのそのまたお爺さんの代からあるというジョースター家代々に伝わるという大切な時計だ。
古いと言っても今でもこうしてきちんと時を刻んでいる。月に一度、時計屋が修理したりネジを巻いたりしては「本当に良い仕事をしている」と褒めてくれる。この時計を作った職人はよほど素晴らしい腕の持ち主だったろう。
「12時だね」
「それがなんだ」
「もう君の言う事を聞くのは『おしまい』ってことさ」
ディオの真っ赤なほっぺたは、すうっと色を無くしていく。それなのに、汗がたらりと額から一筋流れ落ちていく。ジョナサンはじっと雫が垂れていくのを見つめていた。
「関係あるか!」
「君がなんて言おうと、ぼくはぼくで好きにさせてもらうことにするよ」
言い終わらないうちにジョナサンは、ディオのシャツのボタンを全て外して、腰の隙間から抜き取った。シャツはくるりと丸めて、後ろ手で床のどこか手の届きそうもない場所へと放った。
「あ! ……ジョジョ、おまえぇ!」
「往生際が悪い」
ディオの胸を隠している両手の手首を掴んで、ジョナサンは一層近づいて目を合わせた。ディオは嫌そうに睨んでいたが、眼光は弱まっているようだった。
「思わせぶりな態度を取って楽しいかい? 君だって知っててやっているんだろ」
「うるさいッ!」
「本気で嫌なら逃げればいい、ご自慢の駿足を使ってさ」
ジョナサンはディオの太ももを割って、身をそこに入れた。大きく股を開かせられてしまったことにディオはまた赤面する。
なんとも無様な格好だった。衣服は抜き取られ上半身は裸で、目の前には何一つ乱れた姿をしていない男がいる。肉体もそうだが、何よりも精神が辱めを受けている。ディオは恥ずかしさと怒りでぶるぶると唇を震わせていた。
「さぁ手をどけて御覧よ、それとも恥かしくて出来ないかなぁ?」
甘ったるく幼児言葉を使って、ジョナサンは鼻で笑った。ディオは売られたケンカは必ず買うタイプだ。そのことをジョナサンは熟知している。だけど、ジョナサンの思惑通りにいくようなディオもそこまでお馬鹿さんではない。
「フン! ムキになってるのはおまえだろ。ジョジョ、みっともないもんだぜ」
ぷいと顔を外方に向けて、ディオは手を脇の下に挟んで更にしっかりと胸を包んだ。
じりじりとした視線がディオを焼いていたが、それでも無視を決め込んだ。一体このやりとりはいつまで続けなくてはならないのかと、意地っ張りな二人はどちらも動けずにいた。
ほんの数秒が何時間にも思えた沈黙だった。
首がひん曲がりそうになるくらいに顔を背けているディオは目線だけでジョナサンを探った。視界には舌を出したジョナサンが、自身の乾いた唇を舐めたのが見える。
その動作の次に何が起きるかディオは知っていた。だが、心のどこかでする訳がないと甘く見ていたのだ。
「…………ッッ!!!」
――まさか、そんなバカな!
衝動であった。
理由や動機など二の次だった。ジョナサンの体や手はただそれの為だけに動いていた。
そしてディオの眼前に広がった光景は、有り得ないものだった。心の臟を射抜かれる衝撃。息も声も全てが止まった。
奪われ、食い尽くされる恐怖がディオの中を占めていく。
――イヤだ、イヤだ、イヤだッ!!!
「ン、ングウッ、ウウッ! んんんンンンッッ!」
何が何でもディオは逃れたく、ジョナサンの其処ら中を掻き毟って、相手の髪を引っ張った。ぶちりと何本かが抜け落ちて、ディオは手に残った黒髪を汚らしいものとして、すぐに振り落とした。
無理にこじ開けられた唇へ、厚ぼったい舌が口腔中を駆け回って吸い尽くす。果ては喉元まで犯される。深く押し込められた舌をディオは噛み切ってやりたかったが、抵抗しようと動く度に顔の角度を変えて違う場所を責められディオの動きは封じられた。
「ンン、ンンウ、んん……ッ! ……んはァッ!!」
でろりと、混じりあってどろどろになった涎がお互いの口の端からこぼしながら、唇が離れていく。ねばついた液は、ついと糸状に伸びて二人の唇を結んでいた。
それがディオにはおぞましく映ったのだろう。すぐに自分の手の甲で拭って、必要以上にごしごしと擦った。
そして、それがいけなかった。
ディオはキスをされたことに意識が集中してしまったのだ。腕も手も今は胸を隠していなかった。
ジョナサンの衝動のキスは、結果として思惑通りになってしまった。
「や、……嫌だッ!」
ソファに押さえ込んで、ジョナサンはディオの手首を掴んで握り締めた。必死に抵抗し、隠していたものとは一体なんなのか。
閉じていた秘密がやっと開かれる。
「イヤ! イヤだ! くそぉ……!! ジョジョォ、このッ……!」
じたばたと暴れまわる両足の攻撃などものともせず、ジョナサンはただそこにある秘密に息を飲んでいた。
ディオが、守り抜きたかった秘密、おそらく誰も知らない彼の柔肌。
白百合よりも白い胸はわずかに膨らみ、両胸に咲いているのはふっくらと腫れた乳首で熟れた赤葡萄色をしてぴんと硬く尖っていた。
「大きい……」
ジョナサンは率直な感想を述べてしまった。
「……ッッ!! ジョジョのクソ馬鹿野郎ッッッ!!!!!」
ディオにとって一番見られたくない相手な上に一番言われたくない台詞であった。
どうせ殴っても蹴っても、効果はない。もうありったけの罵声を浴びせてやるしかディオにとっての反抗の方法は見つからない。
「このカスがぁッ!! マヌケ!! でくのぼう!! アホぅ……ッ!! きさまなんて便所のネズミにケツの穴から食われてしまえ!!! クソが! くそぉ……ッ」
どんなにディオが喚こうが騒ごうが、ジョナサンはびくともしなかった。
暴言も罵声も悪口も、すでに「こんにちはジョジョ」と言われているくらいに慣れ親しんだレパートリーの数々だった。「死ね」が、「やあ」と同義語なもんである。
人間の順応性とは優れて発達していると感心する。
逆に、これほどにディオが喚きたてるとは、余程この体の特徴にコンプレックスを抱いているのか。そう思うと、ジョナサンの頭はくらくらした。
――いけないな、これはぼくのほうがやられそうだ……。
「うぅ……ッ死ね死ね死ね死ねッ!!! 殺してやるゥッッ!!! うううッ……」
飽きもせずディオはあらゆる罵倒を繰り返し、ジョナサンの尻を踵で何度も何度も叩く。
「ディオ、これはどういうことなんだい? ……君、女の子なの?」
ひくひくと笑いを堪え、頬を震わせながら、ジョナサンはディオの顔をちらりと見て、聞いてみた。
今までも真っ赤だった顔がそれ以上に染まっていき、血が沸騰するんじゃないかと思わせる。
確かにディオは男だった。いや、男に間違いはない。間違いなどあってたまるものか。
だけども、ジョナサンの目の前には女性へと成長しかけている少女の胸と見紛うばかりのものがあった。その部分だけがなだらかなカーブを描き、ツンとたった頂点には柔らかそうで硬そう尖りがぷっくり育っている。
「誰が! 女だッ!!」
「でも……これ、男の胸とは思えないよ、どう見てもおっぱいじゃあないかッ!」
「違う! 違うッ! こんなのッ!!」
ディオが否定し、首を振ると、胸の膨らみはふるふると揺れた。
ジョナサンは、大人の女性の胸なら写真や本でいくらでも見たことはあったし、本物の「おっぱい」も数回なら見たことがあった。だが自分よりも幼い少女の裸は見たことはなかったし、想像もしたことがない。犯罪になるからだ。
思わず生唾を飲み込んでしまう。ここにあるのは、同じ年の男のただの胸板に過ぎない筈だ。ただ妙な膨らみのおかげで、まるで初潮もきていない年端も行かぬ少女の乳房を見ているような気分になってしまったのだ。
ディオの肌に触れて、胸をときめかせていたのは事実だ。そして今ジョナサンは明らかに自分が興奮しているのだと自覚して、思わず身を屈めていた。
「女でも男でも、見たことない色してる……」
ジョナサンにとって、ディオの乳首の色や形は不思議なものだった。男連中のそれにわざわざ注目した記憶はないが、こんなに特徴のある人間は知らない。
個性や人種によって多少は変わるが大体はみな平均的なものだ。自分だって、その「普通」の中にいるとジョナサンは思っている。
女性も人によって様々な色や形をしているものだが、それでもディオのソコは特別変わっている。奇妙なバストもそうであったし、特にジョナサンが変だと思うのはやはりその乳首であった。
サイズはクラウン銀貨と同じか、それよりもっと大きいだろうか……。
確かめるべく、ジョナサンはまじまじと観察した。
「……やめ、……ッ!!」
ディオの呼吸に合わせて、ぴくぴくと熟した果実は揺れる。その色は実に蠱惑的に見えていた。
「ねぇ、これ生まれつきでこうなったの? それとも自分でいじったりしたから?」
「するかぁッ!! …………ぁうッ!」
ディオが反論するタイミングで、ジョナサンはぷるんとした実にロウソクの火を消す様に息を吹きかけた。
それだけでもディオは身を捩らせてしまう。
――凄い反応だ、こんな体でよく生活出来るもんだな。
だたちょっぴり触れただけ、ほんの少しの吐息をかけるだけで、はぁはぁと胸で息をし、顔を熱くさせて、いくら敏感な体だとしてもこれはどうかとジョナサンは思った。
「……んン゛ッ!?」
ジョナサンは親指の腹で、乳輪のふちをなぞった。くるりと円を描き、周辺の肉を摘む。ぽっちりとして膨らんでいる突起自体には触れないように、ジョナサンは両胸の肉を挟んでいる。
「痛い?」
きゅっと指先に力を込めると、乳首の色はまた一段と濃くなる。尖った先がぷくっと丸く親指と人差し指に挟まれて顔を出している。
「ふぐっ……んッ!!」
自由になった筈のディオの両手は、力なくくたりとソファに預けられていた。ぎちぎちとジョナサンの体を縛っていた太腿も今は脱力している。
「じゃあ、これは?」
「あッ……イヤ……だッ!! あ、……ひッ!」
きゅうう、とジョナサンは絞るように指の間隔を狭めていった。びんびんに硬くなっている肉粒を摘まみ上げると、とうとうディオは悲鳴を上げた。
「ぃ、痛ッ! ……んん、やぁうッ」
「ふうん……」
つまみ上げていた乳豆から指を離して、小さな胸を下から持ち上げてこねくった。むにりとした柔い肉がジョナサンの手の中で形を変えていく。
勝った、とジョナサンは密やかに喜んだ。勝手に持ち込んだ賭けにジョナサンは勝利していた。
あのディオに声を上げさせたことも、このやらしい行為を続けさせたことも、どちらもジョナサンの勝ちの証明だった。
本来なら、ここで止めて良かった。もう充分過ぎる程だった。自分の良心にやりすぎだと怒られるくらいだ。
だけど、物足りない。まだ心の中を満たしたいとジョナサンは思った。
「んんっ、はぁ……あっ、あ、」
未成熟な女子の胸は固さが残っていて、中に芯が入っているような感覚がする。ディオの胸はそれとも違った。そして大人の女のおっぱいの柔らかさとも違う。確かに男の肉なのだが、「変」だ。女のとも違う。ではこれは一体何なのだろう。ジョナサンは飽きることなく繰り返し同じ動きでディオの胸を揉んでは、確かめた。
「や、……やめ、やだ、い、いた、ッ! イッ……!」
柔肉はだんだんと手の平に馴染み、弾力を残しつつも更にふんわりと膨らんでいる。そして反対に乳の実は硬く充血している。
結局、欲望に身を委ねてしまったジョナサンは思うままに腫れる乳実に吸い寄せられていた。
厚ぼったい舌が、ディオの肌をぬるぬると舐めたと思うと、熟れ腫れた肉果を舌先が啄いた。
「イタッ……! いやだ、それ……やだジョジョ!」
痛々しく腫れ上がっている乳首の先端はどこよりも敏感で、体のどこよりも柔らかい舌で触れるだけでもディオは痛がった。
普段から「痛い」なんて滅多に零さないディオが痛がる姿は新鮮だった。
弱くて鍛えようのない部分、それが無防備にジョナサンの目の前に晒されている。
「ンんん……だめ……! そこ……やめ、イヤッ……あ、アッ!」
焦らして、自分から強請るくらいに勿体つけてやろうとジョナサンは思っていたのに、自分が我慢出来ずに、ディオのそれに吸い付いていた。
乳輪はふにゃふにゃと赤ん坊の腹みたいなのに、丸い乳首そのものは硬い青い実の感触がしている。
舌で飴玉を転がすように弄ると、ディオはぎゅっとジョナサンの腰を足で挟んだ。
「ああ、可哀想にディオ。女の子みたいな声出しちゃって」
「う、うう……ん、んぐ……ッ」
言われて思わずディオは口を閉じ、吐息を漏らす。鼻から抜けていくふうふうとした熱い息は獣の様だった。
「片方だけじゃ、ダメだよね」
「ひ、あ、ああッ!」
ちゅう、ちゅるるるッ
ジョナサンは反対の乳首も同様に吸った。軽く歯を立ててやると、実はますます硬さを増したのだった。
「あっ……いやあ、いや……だめ、それ、吸うなあ……」
ちゅうう、じゅると千切れんばかりに唇で包んで吸い、舌は尖った先をつついて転がして遊んでやる。気の済むまで吸い尽くすと、唾液を垂らしながら唇を離した。
チャイナの皿にそっくりの真っ白なディオの胸はジョナサンの涎でてらてらと淫猥に光っていた。
「すごい、もっとぷりぷりしてる」
ジョナサンは悪戯っぽく、人差し指でそのはちきれそうな乳豆を弾いた。
「ひゃぅ! ん!」
高い声はあのディオの口から出されているのかとジョナサンは不思議でならなかった。
いつも自分を問い詰めて責め立てる声は低く不快だった筈だ。甘ったるくて情けない「喘ぎ」声など、あのディオが出す声なのだろうか。
呼吸ひとつすら苦しげに行うディオの赤く染まった唇を眺めた。ほんの少し開いた唇からは熱くて甘い吐息が漏れ、ジョナサンの顔にかかった。
「……ン……ッ」
鼻にかかる声が自分なのか、相手なのか分からなかった。
キスがしたいと思った時には、もうしていたからだ。
先ほどした奪う口付けではなく、与える接吻だった。
「ディオ……、んッ……」
「う、ん……ッふあ……」
ジョナサンは今度はじっくりとディオの唇を味わう。ディオの上唇は薄めだが、下唇が厚い。舌は誘って絡まり、合わさった間からくちゅりと音がした。
腕が自然にディオの背中や腰に回って、弱く抱きしめると、ディオは返事をするようにジョナサンの頭を抱いた。ぬくもりに包まれて、ジョナサンは鼻から深くディオの匂いを肺へといざなった。
「んん、……、はぁ……」
薄目でジョナサンはディオを見た。視界の中の表情はぼやけていたが、唇が合わさっているのだから仕方ない。金色の睫毛が涙で濡れている。濃い眉は少し下がっているが、それは恍惚の色を表していた。
理性の中のジョナサンは、なんでディオとこんなことをしているんだと混乱していたが、本能の中のジョナサンはただひたすらに気持ちいいことを求めて、ディオの口の中に自らの舌を更に潜り込ませる。
「ディオ……ん、ディオ……」
抵抗されないと知れば、ジョナサンはもっと深く唇を合わせた。二人の口内の温度が同じになるまで、何度も何度もキスを交わす。お互いの舌が行き来し、口の端からはどちらか分からない涎が垂れる。
体がぴったりと密着すると、ディオの小さな膨らみが服の上から感じられ、ジョナサンは腰に回していた手を伸ばして、優しく乳を揉む。
「……! ンッ……あ、」
接吻に夢中になっていたディオが、ビクンと背筋を伸ばして反動で離された口から声を上げる。
一番近い場所でその声を聞いたジョナサンは、真実、ディオの声なのだとやっと納得して嬉しくなっていた。思わず、乳にある手にも力が入る。
「ん、ッ! いた……ッ!」
時折、いつものディオの低い声が混じるのも良かった。
あのディオが、甘い高い声を上げているということが、やはりジョナサンを興奮させているのだ。はっきりそう感じると、ジョナサンの下半身はむずむずし始める。
「痛い? ……じゃあ、これは?」
キスが終わるのをディオは一瞬嫌がり、離れがたいと思った自分に恥ずかしくなって、また唇を噛む。ジョナサンは赤くなるディオにすっかり愛しさを覚えていた。
ジョナサンは、頬に音をたててキスを落とす。それから、耳、首、鎖骨、と下がりながら、ちゅ、ちゅっと肌を撫でていく。跡が残るか残らないかの強さで、肌に唇を寄せて、たまに舌を伸ばして味わうと汗のしょっぱさを感じた。
あんなに見られるのを嫌がっていた胸元をディオは曝け出している。ぼうっとした目には薄い涙が浮かび、表情はまだどこか快楽に落ちたくないと悔しげにも見えている。
膨らみの始まりを舌でつう、とひと舐めし、柔らかい肉を軽く噛む。
「んくっ」
刺激を受けると、また乳首はぷくっと硬さを取り戻す。焦らすことなくジョナサンは両の突起を指先で押し潰しながら、爪先で抉る。
「あ゛! い、痛っ!」
くにくにと両胸の花蕾をこねながら、ジョナサンは胸の谷間に吸い付き、柔肉の感触を楽しんだ。
しみひとつないディオの胸は無駄毛もなく、乳首周りも薄い金の産毛くらいしか生えていない。
真っ白だったそこは、汗と涎でぐちゃぐちゃに濡れて、顔や首を同じく赤く染まりつつあった。
『ディオの白い肌をジョナサンが汚した。』
そう思うだけで心臓は煩くざわめき、激しい運動をしていなくてもジョナサンは汗だくだった。興奮で湧き上がる熱は留まるところを知らない。
「ディオ……。ここ」
ジョナサンの身をしっかと挟むディオの太ももを撫で、そのままつけ根へと指先が進む。
「……ジョジョ、やめろっ、それは……やッ……! やああ!」
股の間にたどり着いた先は、はっきりと男の欲情を示しぱんぱんにして、窮屈そうにズボンを押し上げていた。
そっと片手で包み込んで、揉みしだくと、ディオはぶんぶんと首を振った。
「ああ、良かった。やっぱりディオは男の子なんだね……」