短いの練習
- 2016/03/11 04:06
1000とか2000とかで萌えを!
――
「たまには、こう……して、って言ってみてほしいな」
「……ああ?」
ディオは事を済ますと、さっさと自分のベッドに帰ってしまう。ジョナサンは二人で朝を迎えて、シーツの上で触れ合っていたいと思う。だが、ディオは全くそれを許さなかった。
「あの……ほら、ええと、例えばさ、キスして、とか」
「誰が言うんだ」
ディオはもう寝間着の前を整えて、今にも立ち上がって部屋を去ってしまう雰囲気で答える。
「君が……」
「――ハッ、ジョークが下手だな、ジョジョ」
「そんなつもりじゃあないよ」
ディオは手元にあった枕を叩いて、放り投げた。
「このおれがか? 女みたいに? おまえに上目遣いで、強請ってみせろと?」
「だから、たまには、って言ってるじゃあないか」
事が済めば、ディオはディオであり、ディオに戻る。決して、最中のディオがディオではないという訳ではないのだが、とにかく別人な程に変わる。そこがまた良いものだとはジョナサンは思う。
「ふざけるなよ」
「……ウッ……く」
ベッドに乗り上げたディオが寝たままのジョナサンの喉元を掌で押した。
「したいとおれが思ったら、そんなまどろっこしいやりかたなんてしない」
そのままディオの顔が落ちてくるのを、ジョナサンは開いた眼を微動だにせず見守っていた。
「奪うだけだ、そうだろ?」
唇が掠められて、キスとは言えないような行いが終わった。瞬間、唇と唇の表面が擦れ合う。たったそれだけだった。
「……うん」
ディオがディオであるならば、そうなのだろう。
ジョナサンは勝手に思い込んでいただけだった。
彼がどんな立場になろうとも。ほんのひととき、腕の中に収まっていようとも。ディオはディオでしかないと、知る。
本当はそんな彼を一番好いているのだということも、分かっていたことだった。
――
可愛いディオなんていない話