短編かく練習
- 2016/01/14 03:15
また現パロ風
ディオがジョナサン好きすぎる話
かっこいいかっこいい可愛いジョナサンさんを好きで好きで仕方なくて、てゆうかファンですっていうディオ
ティーンから老女まで、幅広い年齢層にひっそりと、しかし確実にファンを持つモデルがいる。
正確には彼はモデルではないらしい。甘いルックス、女性たちの母性本能をくすぐる大きな蒼い瞳、屈託のない少年のような笑顔。
しかし一枚脱げば、腕も胸も足も、どこもかしこも逞しく筋骨隆々としたボディ! 男なら誰しもが憧れるパーフェクトスタイル。無駄な肉などは見当たらず、彫刻物のように計算された肉体。
その肉体を惜しげも無く披露した、ある団体がチャリティー目的で販売したカレンダーは噂が噂を呼び、瞬く間に完売した。
しかし問い合わせが絶えず、増刷されることが決定した……というのは、とっくにディオの耳に入ってきていた情報だった。
これだけメディアで取り上げられ、ネット上でも散々画像がアップされているにも関わらず彼に関する個人的な情報は一切出てこなかった。
そのミステリアスな部分もまた、人々の興味をそそり、より注目を集めた。
ファン達が唯一、共有出来ているものは、彼の名が「ジョナサン」という事だけ。ただそれだけだった。
ディオもあらゆる手を使ってジョナサンについて調べたのだが、本当に何も掴めなかった。
出版社にも問い合わせた。販売元にも電話をした。答えはいつも同じだった。「彼は一般の方ですから、その質問にはお答え出来ません」だ。
これだけ情報化社会になったというのに、誰も彼のことを漏らさないとは。どこかに隔離されているとしか思えない徹底ぶりだ。
もしかしたら、この国の人間ではないのかもしれない。ディオはあらゆる言語で調べて、検索もした。しかし、収穫はやはりゼロだった。
ふと疲れた目でデスクから顔を上げると、眩しい笑顔の彼がビールを片手に微笑みかけてくれる。
幻聴まで聞こえてきた。
「机に齧り付いてないで、ぼくと一緒に飲もうよ」
真っ青な空に白い砂浜、どこの海かは知らないが(ロケ地に興味もないが)ジョナサンがいるなら、今すぐにでも飛んで行きたかった。
自室にあるディオの仕事机は、壁沿いに置かれている。扉から見ると、モニターに隠れるようにカレンダーが貼られている。
今は一月だが、気に入っているのが八月だったのでカレンダーの存在意義など無視されている。
「ああ……せめて職業だけでも分かったらな……」
ディオは恨めしそうに呟きながらも、うっとりとジョナサンの胸筋から腹筋をなぞる。日焼けした肌に汗の雫が滴っている。
触ってみたい。案外、胸のあたりは柔らかいんだろうか。腹は硬いだろうか。見てみたい。隠されている場所も、他の誰も見たことのない部分も。
ジョナサンのカレンダーは、ソッチ方面にも人気があった。
ソッチというのはつまり、ソッチだ。男性が好きな男性にも、大層売れた。元々、その気があるタイプもだが、ディオのようにジョナサンがきっかけで目覚めしてしまった者も少なくは無い。
それほどにジョナサンは罪作りな男だった。男性のファンも、少年から老齢までいた。少年たちは「あんな風になりたい」と思う純粋で健やかな目的でもあったし、おじ様達は「オレの若い頃にあんなヤツがいたっけ」と思い出に浸りながらも、若き日の恋心にしみじみとした。
ディオは、女性にも男性にもモテてきた。男性からの誘いも何度もあったし、好みの人間が居たとしたら、乗ったかもしれない。けれど元々はノーマルであったのでそう簡単にはいかなかった。それに男子校出身で、ラグビー部に所属していたディオは男性に対する審美眼は厳しかった。
男の男らしさ、そして美形と評される自分と釣り合う程の容姿、勿論自分以上の肉体と身長も必須だ。
つまりディオの眼鏡にかなう男などこの世には居ないのだ、とディオは嗤っていた。それがプライドの証明だった。
故に、ジョナサンが目の前に現れた時はそれはもう衝撃だった。その時ディオに電流走る。
気づいたら、カレンダーを三冊手にして帰宅していた。鑑賞用、保存用、使用の三つだ。
どのページも、大体が半裸だった。上半身は脱ぎたがりのようだが、下半身はガードが固い。そこがまた想像させられて、良かった。それにディオとしても、あまり大多数の人間にそのような場所を見られたくはない。
憂いを帯びた横顔や、潤んだ瞳で見上げる顔、悪戯っぽい笑顔、正面から見つめる真摯な瞳……どの月もジョナサンの魅力に溢れていた。
彼を褒める人々の讃辞は十人十色で、それだけジョナサンはイメージで語られることが多かった。理想を彼に当てはめて、各が好き好きに妄想出来る。それがまた人気に拍車をかけていたのだろう。
ディオはカレンダーの最終ページ、つまり裏面を見た。
表紙と裏表紙は着衣だ。中身がほとんど半裸なので、新鮮さがある。きっちりとスーツを着込んだジョナサンが本棚の前で体を小さくして膝を抱えて座り込んで、カメラに目線を送っている。
セットされた髪がわずかに乱れて、ネクタイも若干緩くなっている。
ディオは全十四枚の写真の中で、この写真が一番セクシーだと思っている。肌の見える範囲が最も少なく、ポーズも幼いものだ。それでも、表情や仕草、シチュエーション全てに色気を感じた。
裏表紙の一番下には、小さくスタッフの名前が書かれている。撮影をしたのは女性カメラマンらしい。彼女のホームページには、様々なプライベートに関することが載っていた。
ジョナサンのカレンダーについても仕事として語られていた。彼女はジョーク混じりに、ジョナサンとの関係はあくまで仕事上の付き合いであって、彼と親密ではないし、私にはパートナーがいる、と大きく載せていた。あまりにも問い合わせが多かっただろう。
――ディオも疑っていたものだ。あんな顔をさせられるのは、余程シャッターを切る相手に気持ちが入っているのではないかと、思ったからだ。誰しもがそう疑うほどに、ジョナサンの視線は妖しく、見惚れるものだった。
演技が上手いのか、それともカメラマンの腕なのか。どちらにせよ、ディオはやがて嫉妬の類いを抱くようになってしまう。
購入したての頃はよかった。素直にジョナサンの体型やルックスを見て満足出来ていたのだから。
考える日々が増えれば、雑念が多くなった。会ったこともない男に、恋をしているだなんて、なんて馬鹿げているんだろう。
それでも思わずにはいられなかった。ジョナサンを考えない日なんてなかった。
今まで自分はどうやって生きてきたのかすらも忘れてしまった。夢中になることの本当の意味をディオは知った。
――
ちょっと続きます
ジョナサンと出会うまでは書きたい